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●「夜の底」

手をつけなきゃいけない書類仕事があったのを思い出し、それに関連したコピーが必要になったので夜半に自転車を走らせる。

ずいぶん暖かくなったものの今だに冬枯れの名残りのある上水緑道を越え、少し離れた場所にあるコンビニへ。

夜陰の木立を抜けると見えてきたコンビニの店先には、秋田犬と柴犬がつながれていた。

ところどころ浮世絵を思わせるような緑道から、ほのぼのとした絵本の世界に飛び込んだような感じだった。

店内に飼い主とおぼしき30代くらいの茶髪の女性がいて、雑誌を立ち読みしていた。たぶん夜の散歩の合間に立ち寄ったのだろう。

早々にコピーをすませると店外に出て、飼い主に見られないように二匹の頭をなで倒した。柴犬は愛想が悪かったが秋田犬は無言でじっと私の顔を見つめていた。

帰宅して30分ほど経つが、いまもその濡れた瞳の印象に浸っている(そして今だに書類仕事に手をつけずにブログを更新している!!)。

けれど明日の今頃には一日の忙しさに疲れ果てて全て忘れているだろう。

そんなささいな夜の出来事。

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